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6億円のUber広告フラウド訴訟から学ぶ10カ条の教訓

2020年11月、非常に多くの注目を集めた広告詐欺事件が、4年間の法廷闘争の末和解しました。 ライドヘイリング ビジネスの大手Uberが利用しているアドネットワークの一つであるポンウエアが、Uberに6億円を支払うことに同意しました。Uberによる、実際には配信されなかった広告のクリックに対して、アドネットワークが誤請求していたという主張が認められたという形になります。

米国テキサス州オースティンを拠点とし、NASDAQに上場しているポンウエアは、証券取引委員会に和解契約を提出しました。 実際の支払額は、Uberが当初要求していた17億円の損害賠償とはかけ離れていましたが、Uberは合意の一環として、アラン・クニトフスキー、マーティ・ボロツィク、アンドリュー・クック、デビッド・スタシウクを被告とする請求を取り下げました。

カスタマー アクイジション セキュリティーの第一人者として、不正トラフィックによる悪影響から企業の顧客獲得活動を保護しているCHEQが、この訴訟からマーケターが学ぶべき十項目の教訓をまとめました。

アフィリエイト詐欺に関するボルティモア大学とCHEQの共同調査については、以下よりご確認いただけます。

レポート全文(英語版、PDFファイル):Affiliate Marketing Fraud 2020

1.  詐欺の温床となるオンライン広告の複雑さ

裁判では、オンライン広告における、ステークホルダーの関係の複雑さや透明性の欠如が明らかになりました。

この過去最大の広告詐欺事件は、怒り狂ったCEOに、顧客獲得チームがオンライン広告の複雑さを説明しようとしたことから始まりました。

当時UberのCEOであったトラビス・カラニック氏は、特定のサイトからUberの広告を引き上げるという一見単純な行為が、なぜそれほど難しいのかを問いただしていました。Uberの広告がオルタナ右翼のニュースサイトであるブライトバートに掲載されているのをネットユーザが発見し、活動家グループ「Sleeping Giants」によるキャンペーンの効果も相まって、カラニック氏への非難の声が高まっていたのです。

画像訳:

「Uberの広告は、人種差別主義のブライトバートに掲載されています。
ヘイトサイトから広告を取り下げた300社以上の企業の一つになってください。」

裁判所は、ポンウエアに審問し、Uberの広告表示場所の購入や監視の難しさについて、証拠を集めました。Uberの広告は契約条件に反して、ポルノサイトにも掲載されていました。

裁判においては、キャンペーンマネージャーが、クライアントの購入プレースメントについて質問した時の通信記録が証拠として提示されました。質問を受けたパブリッシャーは大規模なネットワークとしての特性上、高い確率でアダルトサイトへ広告を掲載されることは認めつつも、あるサイトについては「100%アダルトではない」、また別のサイトについては「かなりクリーン」であると回答しています。

この事件は、他の分野に比べて規制が緩く、連携の取れていないオンライン広告業界の縮図です。CHEQとボルチモア大学の調査によると、オンライン広告には異なる組織目標を掲げた20社以上の組織が関与しています。

こうした連携の欠如は、332兆円の業界規模であるクレジットカード業界よりはるかに低い33兆3,000億円の業界規模のデジタル広告業界において、広告詐欺がクレジットカード詐欺よりも大きなビジネスになっている状況を生み出しています。

2. 詐欺による顧客獲得機会の損失

この事例は、顧客獲得キャンペーンがいかに簡単に破綻するかを示しています。たとえば裁判所は、顧客獲得(この場合は乗客にUberアプリをインストールしてもらうこと)が、理想的な状態であればどのように機能するかを聞きました。

「例えば、月曜日に見込み客であるジェーン・ドウはスマホでショッピングサイトを閲覧中に、Uberの広告を目にしますがクリックはしません。火曜日にジェーンはゲームのアプリに掲載されたUberの広告をクリックして、アプリストアへ行きますが、まだダウンロードはしません。水曜日にジェーンはモバイルニュースサイトに掲載された三度目のUberの広告を見ます。この日はジェーンは広告をクリックし、アプリストアにてアプリをダウンロード、インストールします。こういった場合、ジェーンがUberのアプリインストールを行った三度目のモバイルニュースサイトにおける広告のみに対して、ポンウェアは費用を請求することができます。このため、どのクリックがUberのアプリのインストールに貢献したのかを追跡することが重要です。」

しかしUberは、不正を行うことはそれほど難しくないと主張しました。このケースでは、アプリのインストールの過程にて不正が行われうると言います。また、裁判所ではこのような証言も行われました。

「Uberが特定のサイトで掲載されている広告に対してのみ料金を支払うことを知っていたため、被告は広告の掲載を偽造するスクリプトと呼ばれるソフトウェアを作成しました。更にクリックフローディング(実際には広告をクリックしていないのに、クリックしたと偽装するスパム行為)により、実際に発生していたよりも多くのクリック数が報告しました。」

Uberの弁護士は「ユーザーによる選択や広告クリックがなくても、自動的にアプリストアに誘導される自動リダイレクトも使用された」としており、「ポンウエアに支払ったインストールの約90%は、実際には支払いが不要なオーガニックインストールであった」と結論付け、「事実を知っていたら、正当なモバイル広告に対してのみ支払いをした」と主張しました。

関連記事:How Bots Completely Destroy these 6 goals for Demand Generation leaders

3. 内部告発者保護の必要性

Uberの法律事務所であるリード・スミス社は、事件はアドネットワーク内部の告発者から始まったと指摘しました。彼らの情報によると、「二人の元ポンウエア従業員が内部調査を実施し、ポンウエアが配信していなかった広告クリックを、Uberに誤って請求していた事を発見した」とされています。

元ポンウエアの幹部であるイラン・カーネル氏は、CBS Newsで「従業員B」として名乗ることに同意しました。CBSは、カーネル氏が「パフォーマンスの悪さ」のため、2018年にポンウエアによって解雇されたと報道しています。Uberの主任弁護士を務めたリード・スミスの知的財産・テクノロジーパートナーであるジョン・ボビッチ氏は、ポンウェアの「社内調査を意図的に隠そうとする体質の危険性」を指摘しています。

4. 内部告発への障壁

しかしながら新規顧客の獲得成功への高額のインセンティブ支給も一因となり、内部告発者の出現は稀です。審問では、キャンペーンの管理を担当していた従業員が、アプリのインストールを通じてUberのドライバー数拡大に貢献したとして、基本給が年間1,100万円昇給されていたことが明らかになりました。

Uberの元パフォーマンス マーケティング責任者であるケビン・フリッチ氏は、ポッドキャストのMarketing Todayで、キャンペーン支出の不一致について語りました。彼は、多くのアドネットワーク従業員が情報を明らかにしなかったことを非難することはできないと指摘します。

「彼らが悪者だとは思いません。ただ、欲望を克服するのは難しいのです。これは他人事ではありません。アプリのインストールに通常40ドルのコストが必要な状況の中、5ドルしか掛からない方法を見つけたら、目標値を楽々達成させることが出来ます。そんな時、『この話は出来すぎている。何か裏があるのかもしれない』と考えるでしょうか? いいえ、多くの人間はそんな風に考えません。私たちは「大成功だぜ!」と言い、関心を他へ移します。」

5. キャンペーンデータ保管の必要性

重要な広告キャンペーンデータが適切に保管されていなかったことも、綿密な調査の対象となりました。 リード・スミス社は「証拠のひどい破壊」に抗議しました。 これには、Eメールやコンピューター上の情報の「原因不明の損失」が含まれ、「HasOffers」データやサイトのIDデータ、発行者ID、デバイスID、参照URLに関連する情報等が、失われていました。

リード・スミス社はこれらのデータは「事件の重大な証拠であり、こうしたデータがなくては実際のキャンペーン内容を復元することは不可能である」と説明します。広告キャンペーンの従事者は顧客との関係が将来的に悪化した場合に備えて、こうしたデータを適切に管理する体制を整えましょう。

6. どんなコミュニケーションも公開される可能性があるという認識

Uberが(ニューヨークマフィアのボスを倒したことで知られる)RICO法の適用を主張したため、多くのプライベートな通信が開示されました。例えば、2016年10月31日に送信されたメールの中で、ポンウエア従業員は次のように書いています。

「炎上の火種となるような、リンクやスクリーンショットを他のアドネットワークやアフィリエイトサイトから探して、Uberの関心をポンウェアから逸らすしか、うちにはもう選択肢がない。」

別のケースでは、Eメールの件名に「助けてください。ドメインが壊れています」と記載されており、使えなくなってしまったドメインからは多くの収益が見込まれるため、何とかしてドメインをもう一度利用できるようにできないかというIT部門への嘆願が含まれていました。

7. 不正クリックの特定による大幅な節約

結局、元マーケティング責任者のフリッチ氏は、ブライトバート広告の出所を見つけることができず、対処策として150億円の広告費の3分の2を削減することにしました。フリッチ氏は語ります。

「150億円のうち100億円の支出を削減しましたが、Uberアプリのインストール数に変化は見られませんでした。多くの節約ができたものの、皮肉なことに、2017年はみんな浮かれていて、(節約について)それ程気にしませんでした。もしも今、100億円を節約することが出来れば、大事件です。しかし、当時の我々の関心事は、より速く成長するためにどのようにお金を再投資するかについてでした。節約は眼中になく、計画通りに予算を使うことの方が重要でした。現在とは非常に異なる価値観やビジネス戦略の下、行動していました。」

現在、Uberのマーケティングチームは大幅に縮小され、1,200人のマーケターのうち約400人が解雇されました。 もし現在このような経費節減策が発見されれば、皆歓喜するでしょう。

8. 広告業界におけるグレーゾーン

訴訟は最終的な和解となりましたが、広告業界における特定の慣行を「グレー」と見なす人がどれだけいるかを明確にしました。裁判において明らかになった、2019年6月19日に被告から送信されたEメールに、このように記載されています。

「結局のところ、我々は偽のユーザーを使用していないから、詐欺に加担はしていない。質の悪いグレーなトラフィックを購入して、プレースメントを改ざんしていただけだ。誇れるようなことではないけど、他の明らかな詐欺とは違うから、同列に扱われるのではないか心配だ。(中略)Uberは、オンライン広告の汚染に手を焼く他のテクノロジー企業から信頼されたいんじゃないかな。オンライン広告に詐欺が多いことは誰もが知っている。 だから、行動を起こすことで人気を得ようとしているんじゃないかな。」

9. 顧客獲得リーダーの心構え

フリッチ氏は、4年間の法廷闘争を経ても、業界に大きな変化はないと言います。

状況を変えるため、顧客獲得リーダーは広告詐欺を真剣に受け止め、新規顧客の獲得費用やマーケティング成果の計算方法等、組織における指標の正確さを向上させるために取り組むことが重要であるとフリッチ氏は述べます。

「支出の内訳に関心を持ち、見かけ上の顧客の獲得コストが上昇することを容認する必要があります。詐欺的な行為による新規顧客獲得費用は、実際の獲得費用よりも、はるかに安く見えます。あちらこちらを掘り起こして、詐欺の有無や数値の正確さを確認することが必要です。」

10. 依然として少ない顧客獲得キャンペーンの訴訟

事件が法廷に持ち込まれることは滅多にありません。上記の訴訟に関連したUber・Fetchの間の4000万ドルの訴訟も早期に終了しました。(2019年3月、2014年から2017年までUberのモバイル広告キャンペーンを実行していたFetchとの訴訟は、非公開の条件の下、早期解決しました。)

法廷で争うための意欲や体力を持っている企業は殆どありません。資金が必要なため、不正行為を告発したのは通常、大企業(Facebook、Google、Uber等)や政府に限られます。

Uberの広告フラウドの事例でも明らかな通り、デジタルマーケティングを改善するためには、問題の根本原因を理解して、不正クリックを排除し、営業フローの最適化を行うことが必要です。

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原文:10 Crucial Lessons from the $6m Uber Ad fraud settlement

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