2025年プライバシー法改正徹底解説—今から備えるべき重要ポイント
Jamie Vinkle
|プライバシー&コンプライアンス | 2025年4月27日
2025年に起きるデータプライバシー管理の変化
2025年は、データプライバシーと規制遵守において重要な節目となる年です。各地域で主要なプライバシー法(英文)が改正される中、企業は新たなコンプライアンス上の課題に備える必要があります。適切な対応を怠れば、厳しい罰則に直面するリスクがあります。データプライバシーは今や世界的な関心事となり、規制当局が企業による個人データの収集、保存、処理方法に対する監視を強化しています。
米国(英文)、ヨーロッパ(英文)、中国をはじめとする各国政府は、消費者の権利を保護するために新法を制定したり、既存の法律を強化したりしています。同時に、消費者もデータプライバシーに対する意識を高めており、自身の情報の取り扱いについて、より大きな管理権を求めるようになってきました。企業は新しい規制に準拠するだけでなく、顧客との信頼関係を構築するためのプライバシーファーストのビジネスモデルを構築する必要があります。
本記事では、2025年に施行される主要なプライバシー法について、その導入背景、企業への影響、そして準備すべき対策について詳しく解説します。
それでは、具体的に見ていきましょう。
2025年に施行される主要なプライバシー法
米国:州ごとのプライバシー法の拡大
米国では依然として包括的な連邦データプライバシー法が存在しません。これは各州が独自の立法権限と自治権を持っていることによるものです。複数の州でビジネスを展開している場合は、それぞれの州の法律と、ビジネスに与える影響について注意を払う必要があります。
カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)やバージニア州消費者データ保護法(VCDPA)に続き、多くの州が独自のプライバシー法を制定しています。2025年に施行が予定されている州レベルのプライバシー法の概要は以下のとおりです。
デラウェア州個人データプライバシー法(DPDPA:Delaware Personal Data Privacy Act)
施行日:2025年1月1日
デラウェア州プライバシー法(DPDPA)(英文)は、デラウェア州の住民に、個人データへのアクセス、訂正、削除、およびコピーを取得する権利を認めています。さらに、企業に対しては、合理的なデータセキュリティ対策を実施すること、および個人データの収集を特定の目的で必要な範囲に制限することを義務付けています。
アイオワ州消費者データ保護法(ICDPA:Iowa Consumer Data Protection Act)
施行日:2025年1月1日
アイオワ州消費者データ保護法(ICDPA)(英文)は、アイオワ州の住民に、個人データへのアクセス、削除、販売拒否の権利を認めています。企業はデータセキュリティ対策を確立し、センシティブデータの処理には明示的な同意を得ることが義務付けられています。
ネブラスカ州データプライバシー法(NDPA:Nebraska Data Privacy Act)
施行日:2025年1月1日
ネブラスカ州データプライバシー法(NDPA)は、ネブラスカ州の住民に、自身の個人情報へのアクセス、訂正、削除する権利を認めています。さらに、企業に対しては、合理的なデータセキュリティ対策を実施すること、および個人データの収集を正当な目的に必要な範囲に制限することを義務付けています。
ニューハンプシャー州データプライバシー法(NHDPA:New Hampshire Data Privacy Act)
施行日:2025年1月1日
ニューハンプシャー州データプライバシー法(NHDPA)(英文)は、ニューハンプシャー州の住民に、自身の個人データへのアクセス、訂正、削除、およびコピー取得の権利を認めています。さらに、企業に対しては、合理的なデータセキュリティ対策を実施すること、およびデータ収集を特定の目的に必要な範囲に制限することを義務付けています。
ニュージャージー州データプライバシー法(NJDPA:New Jersey Data Privacy Act)
施行日:2025年1月15日
ニュージャージー州データプライバシー法(NJDPA)(英文)は、ニュージャージー州の住民に、企業が個人データを販売すること、およびターゲティング広告に利用することからオプトアウトする権利を認めています。さらに、住民は、企業が保有する自身の個人情報へのアクセス、訂正、削除を要求する権利も取得します。
テネシー州情報保護法(TIPA:Tennessee Information Protection Act)
施行日:2025年7月1日
テネシー州情報保護法(TIPA)(英文)は、テネシー州の住民に対して、企業が保有する自身の個人データへのアクセス、訂正、削除、およびコピーを取得する権利を認めています。さらに、企業に対しては、合理的なデータセキュリティ対策を実施すること、および個人データの収集を特定の目的のために必要な範囲に限定することを義務付けています。
ミネソタ州消費者データプライバシー法(MCDPA:Minnesota Consumer Data Privacy Act)
施行日:2025年7月31日
ミネソタ州データ慣行法(MCDPA)(英文)は、ミネソタ州の住民に対して、企業が保有する自身の個人データへのアクセス、訂正、削除、およびコピーを取得する権利を認めています。さらに、企業に対しては、合理的なデータセキュリティ対策を実施すること、および個人データの収集を特定の目的のために必要な範囲に限定することを義務付けています。
メリーランド州オンラインデータ保護法(MODPA:Maryland Online Data Protection Act)
施行日:2025年10月1日
メリーランド州オンラインデータ保護法(MODPA)(英文)は、メリーランド州の住民に対して、企業が保有する自身の個人データへのアクセス、訂正、削除、およびコピーを取得する権利を認めています。さらに、企業に対しては、合理的なデータセキュリティ対策を実施すること、および個人データの収集を特定の目的のために必要な範囲に限定することを義務付けています。
複数の州で事業を展開する企業にとって、このモザイク状の法規制に対応していくことは、ますます困難になっていくでしょう。企業は、最も厳格な州の要件を満たす統一的なプライバシー戦略を採用し、すべての地域でのコンプライアンスを確保する必要があります。
EU(欧州連合):プライバシー法のさらなる拡充
EUは2018年のGDPR導入によって世界のプライバシー法の基準を確立し、現在も消費者プライバシー保護において最高水準を維持しています。2025年には、さらに2つの重要な法律が施行されます。
デジタル・オペレーショナル・レジリエンス法(DORA:Digital Operational Resilience Act)
施行日:2025年1月17日
DORAは、EU域内の銀行、保険会社、投資会社などの金融機関のITセキュリティ強化を目的(英文)としています。この法律により、ネットワークおよび情報システムのセキュリティに関する統一要件が確立され、金融機関がサイバー脅威に対する運用上の耐性を確保できるようになります。
データ法(Data Act)
施行日:2025年9月12日
データ法(英文)は、EU内で生成されるデータへのアクセスと利用を全経済セクターにわたって規制します。この法律はデジタル環境における公平性の確保、競争的なデータ市場の促進、データドリブンイノベーションの機会創出、そしてすべての人がデータにアクセスしやすくすることを目指しています。
英国:後れを取るまいと…
ブレグジットによって英国はEUを離脱し、GDPRの適用対象外となりましたが、依然としてデータ保護法(DPA)を有しており、2025年に向けてプライバシー保護の拡充を目指しています。
データ(利用とアクセス)法案(DUA Bill:Data (Use and Access) Bill)
施行日:審議中(2025年に施行予定)
DUA法案(英文)は、ブレグジット後のデータ保護法改革に向けた英国政府の取り組みです。この法案は、データ保護水準を確保しながら、データ関連のイノベーションと経済効率化を可能にすることを目的としています。データ主体の権利や自動化された意思決定などの分野で変更を提案し、成長促進と企業の法令遵守の負担軽減に焦点を当てています。
オンライン安全法(OSA:Online Safety Act)
施行日:2025年を通じて段階的に施行
OSA(英文)は、ソーシャルメディアプラットフォームや検索サービスを含むオンラインサービスに対し、コンテンツの管理、子供のオンライン保護、ユーザーが受け取るコンテンツの制御機能の提供を義務付けることで、大人だけではなく子供にとっても、より安全なオンライン空間を実現することを目指しています。英国通信庁(Ofcom)には、非準拠に対する多額の罰金を科す権限を含む、OSAに基づく強力な執行権限が付与されています。
中国の新法がセキュリティ規制の更新を目指す
2021年に個人情報保護法(PIPL)を導入して以来、中国はプライバシー保護に関して最も厳しい国の一つとして認識されています。 2025年には、中国は新しいネットワークデータセキュリティ管理規則を導入する予定です。これにより、プライバシーと規制の分野におけるリーダーとしての地位を、さらに強固なものにするでしょう。
ネットワークデータセキュリティ管理規則(Network Data Security Management Regulations)
施行日:2025年1月1日
これらの規則(英文)は、中国国内におけるデータセキュリティとプライバシー保護の強化を目指し、国内外の事業者に対して包括的なコンプライアンス要件を確立します。主な規定は以下の通りです:
- 個人情報保護:企業は、個人データの機密性と完全性を確実なものとするため、より厳格な個人情報保護対策を実施することが求められています。
- 越境データ転送:越境データ転送について明確なガイドラインが定められており、不正アクセスを防止するために、セキュリティ評価と承認を義務付けています。
- プラットフォーム事業者の責任:オンライン プラットフォーム運営者は、データ セキュリティ プロトコルを強化する責任があり、収集・処理するデータに責任を負う必要があります。
これらの法律は今年施行される多くのプライバシー法のほんの一部に過ぎません。貴社のプライバシーおよびセキュリティプログラムは、これらの法規制に対応できていますか?ビジネス界全体にとって、これらの法律や規制への準拠は必須となるでしょう。
プライバシー法が施行される理由
プライバシー法は、社会の変化やテクノロジーの進化に伴い、データセキュリティ、消費者の信頼、企業の責任に関する懸念が高まっていることを受けて制定されました。このような法改正の背景には、次のような要因があります。
データ侵害の増加
- IBMセキュリティレポートによると、データ侵害の40%は複数の環境に保存されたデータに関連しており、パブリッククラウドに保存されたデータ侵害のコストは平均517万ドルと、とても高額となっています。
- マリオットやメタ、グーグルなどによる大規模な侵害事件では、数十億ドルもの罰金や集団訴訟が発生しています。
消費者からの管理強化の要求
- Pew Research(英文)の調査によると、消費者の 79% が、企業による個人データの取り扱いについて懸念を持っていることが分かっています。
- シスコ・プライバシーベンチマーク調査(英文)によると、消費者の94%が、自らのデータが適切に保護されていない企業からは購入しないと回答しています。
AIと自動化された意思決定への懸念
- AIを活用したデータ収集は、アルゴリズムの偏り、ユーザーの追跡、透明性の欠如といった問題を引き起こす可能性があり、警戒が必要です。
- 規制当局は、AI を活用したプロファイリングと自動化された意思決定を制限する新しいプライバシー法を導入しています。
AIの急速な発展は、プライバシーの問題を複雑化させ、新たな法整備の必要性を生み出しています。このため、今後もプライバシー保護のための法律が制定され続けることは間違いありません。
プライバシー法の先手を打つためにできること
これらの法規制すべてに準拠し続けることは、困難な仕事のように思えるかもしれません。実際、それは間違いなく困難です。しかし、絶え間ない法改正を単なる課題と捉える企業がある一方で、成功している企業はこれを競争優位性を築くチャンスと捉えています。あなたの組織がどのようにして、このチャンスを活かせるのか、ご紹介します。
プライバシー自動化ツールの導入
下記のような機能を提供したプライバシー技術ソリューションに投資することで、コンプライアンスを自動化し、リアルタイムでデータを追跡し、規制報告のための監査ログを確保することができます。
- コンプライアンスモニタリングの自動化
- リアルタイムのデータ追跡ポリシーの実施
- 規制報告のための監査ログの提供
プライバシー関係者の連携体制を構築
プロダクトチームと、法務チームや情報セキュリティチームなどのプライバシー関係者が、できる限りスムーズに連携できるツールを導入することで、関係者の連携体制を構築することができます。
定期的なプライバシー監査の実施
企業は、データ収集、保存、処理活動について、組織全体を把握し、コンプライアンス違反のリスクとなりうる箇所を特定することが求められます。
コンプライアンスを競争優位性に変える
2025年に施行される新しいプライバシー法に準拠するため、企業は今から積極的に対策を講じることが不可欠です。規制への対応は負担が大きいと感じるかもしれませんが、プライバシー保護を重視する企業姿勢は、消費者からの信頼を獲得し、ひいては競争優位性にもつながります。罰則を回避するだけでなく、より強固な顧客関係を構築することで、企業は変化をチャンスに変えることができるのです。
最後に:プライバシーコンプライアンスの未来
プライバシーコンプライアンスをシンプルにしたいですか?法的義務としてではなく、ビジネスの最優先事項としてプライバシーを捉える企業は、新たな規制環境下でも成功するでしょう。成功するための鍵は、積極的なコンプライアンス、強固なデータガバナンス、そしてプロセスを効率化するテクノロジーの活用です。
CHEQ の無料セキュリティ診断を予約して、ビジネスが完全にコンプライアンスに準拠していることを確認し、執行措置が始まる前に備えましょう。