「クリック詐欺」の脅威と対策法:広告費を守るためにマーケターが今すぐできること
Yukie
|Web サイト運用・セキュリティ対策 | 2025年6月05日
クリック課金型の広告に、ターゲット以外のボットや第三者が大量にクリックを発生させて損害を与えることを「クリック詐欺」と呼びます。この記事では、クリック詐欺の仕組みや種類、企業に与える影響を解説します。有効な対策もまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
クリック詐欺の仕組みと脅威
クリック詐欺とは、クリック課金型の広告を標的として何度も自動的にクリックが発生することにより、広告費が不正に搾取されてしまうことです。具体的には、不正なアクセスで広告費を浪費させたり、広告の効果を低下させたりするなどの悪影響があります。
企業のマーケティング戦略の深刻な問題となるこの不正行為には、さまざまな手口が存在します。
ボット・オートクリッカーによる広告クリック詐欺
ボットやオートクリッカーは、人間を装って広告クリックを自動生成し、広告収益を不正に得るプログラムです。仕組みとしては、マルウェア感染させた一般ユーザーのパソコンを遠隔操作する手法や、特殊なブラウザなどを使って、自動プログラムを速く大量に動かす方法などがあります。
近年では、広告配信ロジックをすり抜ける手口も増えています。たとえば、広告審査を通すために健全な内容を偽装したクローキングや、プレースメント情報を偽るドメインスプーフィングなどが代表例です。これにより、本来ターゲットではない層に広告を配信し、不正な収益を上げるケースが見られます。
さらに端末情報であるユーザーエージェントを偽装し、パソコンやスマホなど多様な機器からアクセスしているように見せかけることもあります。これらのクリックボットによる損害を防ぐには、広告不正を自動で検知・ブロックできるアドフラウド対策ツールの導入や、専門ツールによる常時監視、アクセスログの分析が有効です。
また「CAPTCHA」を導入することによって、人間によるアクセスかボットによるアクセスかを判別することも可能です。
クリックファームと人的作業による不正クリック
広告への不正クリックは、多くがボットによって自動で行われますが、人間が直接、大量のクリックを行う「クリックファーム」という手口も存在します。
クリックファームは大量の人間を雇用してクリックを手動で行わせる組織のことで、ボットのような不自然な操作が起きにくく不正アクセスであるという判別が難しい点が特徴です。クリックファームで雇用されるのは主に低賃金の発展途上国の人たちであることが多く、パソコンだけでなく中古のスマートフォンなどが使用されるケースもあります。
クリックファーム以外にも、人の手による不正クリックは存在します。例えば、競合する会社の広告費を無駄遣いさせるためのクリックや、個人的な嫌がらせ目的で行われるクリックなどです。
VPNやプロキシを悪用したIP偽装
ボットによる不正クリックでは、攻撃元を隠したり、アクセス元を偽装したりするために、さまざまなIPアドレスが使い分けられます。これにより、特定の地域からのアクセスだけを対象とするジオターゲティング広告の仕組みや、不正が疑われるIPアドレスをブロックする対策などを、すり抜けてしまうことがあります。
本来、VPNやプロキシ、匿名ネットワークなどは、ユーザーのプライバシー保護やセキュリティ向上のために使われる技術です。しかし、これらが不正クリックを行うボットに悪用されるケースがあります。その結果、不正なアクセスが普通のアクセスのように見せかけられ、検知が困難な「隠れた不正行為」となってしまうことがあります。
クリック詐欺が与える広告パフォーマンスへの影響
不正クリックの被害は、単に広告費が無駄になるという直接的な損失を中心に、広告運用において重要な指標であるクリック率(CTR)、コンバージョン率(CVR)、顧客獲得単価(CPA)にも深刻な影響を及ぼします。
さらに、マーケティングの意思決定全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。歪められたデータに基づいて施策を判断してしまうことで、最適なターゲティングや予算配分ができなくなり、結果として効果の低い施策を続けてしまうリスクが高まります。
広告費用が無駄に使われる
クリック詐欺などの不正クリックによる最大の問題は、広告費用が無駄になることです。本来のターゲットユーザー向けの広告が、ボットなどの偽のユーザーによってクリックされ、広告費が無駄に消費されてしまいます。これにより、コンバージョンなどの本来の成果につながらず、費用対効果が悪化します。
データの精度が失われる
不正クリックはデータを歪め、広告効果測定の精度を著しく損ないます。例えば、クリック率が見かけ上高くても、コンバージョンなどの実際の成果が伴わないといった状況です。
このような信頼性の低いデータに基づいてA/Bテストを行っても正しい判断はできず、誤った意思決定につながる危険性があります。さらに効果のない広告を続けたり、不正対策が不十分だと見られたりすることは、ブランドイメージの低下を招くおそれもあるため、広告主にとってデメリットとなります。
本来のターゲットに広告が届かない
不正クリックで広告予算が浪費されると、本来広告を届けたいターゲットユーザーへの表示機会が失われます。ボットなどの偽のユーザーへのクリックで予算が消化され、本当にリーチすべき潜在顧客への広告配信が手薄になってしまいます。これは広告費が無駄になるだけでなく、貴重なビジネスチャンスの損失にもつながりかねません。
マーケターが今すぐ取り組むべきクリック詐欺の対策法
クリック詐欺から広告を守るためにはマーケター自身の対策が不可欠です。代理店に頼るだけでなく「自衛」の意識を持ちましょう。
IPアドレスの除外設定とモニタリング
不正クリック対策の有効な手段として、IPアドレスの除外設定があげられます。Google広告などには無効クリックを検出する仕組みがあり、レポートから不審なIPアドレスを特定できます。これらを除外リストに追加し、定期的なモニタリングと更新を行うことが重要です。
このほか、配信時間帯の制限、ボットフィルター、URLパラメータ活用なども有効な対策法です。
ボット・スクレイピングの検出とブロック
不正ボット対策として用いられるのが「CAPTCHA」です。歪んだ文字の読み取りや画像選択といった、ボットには難しく人間には易しい課題で、両者を区別します。
しかし、AI技術の進化で「CAPTCHA」を突破する高度なボットも登場しており、より巧妙な対策が求められています。そこで注目されるのが、ユーザーにテストを課さずにアクセス時の行動を分析する技術です。
マウスの動きやキー入力パターンなどを裏で評価し、人間らしい自然な操作かをスコアリングします。これにより、ボットの疑いが強いアクセスのみを特定しブロックできます。この方法なら、通常のユーザーは手間なくサイトを利用でき、利便性を損なわずに不正アクセスを効果的に防ぐことが可能です。
クリック詐欺に強いアドフラウド対策ツールの選び方
クリック詐欺を防ぐには、アドフラウド対策ツールの導入が有効です。例えばCHEQでは歪んだ文字の読み取りや画像選択といったテストで「アクセスが人間によるものか」「プログラム(ボット)」なのかを、高度に区別する技術を保有しています。
リアルタイム検知と自動ブロックの重要性
クリック詐欺対策ツールの多くは、データのリアルタイム検知と自動ブロックを行います。手動では検知が難しい即時検出を行うことで、広告予算の損失を食い止められます。
特定の地域からのアクセスが多い場合はその地域のアクセスを制限することも可能です。また深夜にアクセスが集中する場合は、ターゲットが活動する時間のみに限定することもできます。
対策ツールにはさまざまなものがありますが、セキュリティ対策では世界的に定評があるのは「CHEQ」です。世界の1万5000社以上の企業で不正トラフィックからビジネスを保護している実績があり、多くの日本企業も利用しています。
多チャネル対応とマーケティングツールとの連携
対策ツールはFacebook・Google広告・アフィリエイトなども一括して監視できるものがおすすめです。また、マーケティングツールなど、既存のツールと連携してアドフラウド対策ができるかどうかも選定のポイントとなります。既存のツールと連携することで、クリック詐欺の傾向を数値化することも可能です。
最新トレンド:AIと自動化が変えるクリック詐欺対策
急速に進化するAI技術は、クリック詐欺(アドフラウド)対策の分野でも強力な武器となりつつあります。しかしその一方で、攻撃に用いられるボット自体も進化を続け、人間と見分けがつきにくい、より巧妙なものが登場しています。
スマートボットの進化と新たな脅威
AI技術などが防御策を進化させる一方で、不正行為を自動化するプログラム、つまり悪質なボットも同様に洗練されています。これらは人間の操作を巧妙に真似るため、基本的な検知方法や既存のセキュリティ対策では判別が難しくなっています。
まさに、攻撃手法と防御技術が追いつ追われつの関係にある「いたちごっこ」の状態です。そのため、新たに出現する脅威へ常に対抗できるよう、セキュリティ対策も更新し続けなければなりません。
AIによる異常検知モデルの導入
こうした高度なボットに対抗するため、AIを活用した異常検知モデルの導入が進んでいます。機械学習モデルは、大量のアクセスデータから、通常とは異なるパターンや疑わしい挙動を学習し、人間では見逃しがちな不正を高精度で検出することが可能です。
これにより、不正クリックによる広告費の損失リスクを効果的に軽減し、結果としてコスト削減にも繋げることが可能になります。
広告費を守る第一歩は、無料セキュリティ診断から
クリック詐欺やアドフラウドによる損害は、広告効果の低下や広告費の無駄といった経済的影響にとどまらず、企業ブランドの信頼性にも悪影響を及ぼします。デジタル広告が主流となった現代において、こうした不正は引き続き注意が必要です。
多くの企業がすでに対策を講じているとはいえ、アドフラウドの手口は日々巧妙化しています。そこで有効なのが、CHEQのセキュリティ診断です。既存の運用体制に問題がないかを点検することで、思わぬリスクの発見につながります。
現状のリスクを“見える化”し、必要に応じてツールの導入や見直しなどの追加対策を講じることで、広告費の最適化を図るとともに、企業のマーケティング活動全体の信頼性も高めることができます。
適切な対策を継続することで、広告費の浪費を防ぎ、ひいては企業の信頼性を守ることにもつながります。
まとめ
クリック課金型広告に対して大量の不正クリックを発生させ、広告費を浪費させるクリック詐欺は、企業にとって深刻なデジタルリスクです。広告効果の低下にとどまらず、ブランド信頼にも悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、早期の対策やアドフラウド対策ツールの導入によって、被害を最小限に抑えることは十分に可能です。大切な広告予算と企業の信頼を守るために、自社の広告運用に合った適切な防御策を講じていきましょう。