ムダな広告を見直し・削減して利益を最大化するには
Yukie
|Web サイト運用・セキュリティ対策 | 2025年6月24日
多くの企業が費用を投じてさまざまな広告を打ち出していますが、そのすべてが成果につながっているとは限りません。出稿する広告媒体やクリエイティブによってパフォーマンスには差があり、時には無駄なコストが経営を圧迫しているケースも見られます。本記事では、広告費削減前のチェックポイントや、利益を最大化するための施策例を紹介します。
広告費削減はなぜ重要か
広告費削減の目的は「利益の最大化」と「投資対効果の改善」です。効果の低い広告を見直し、コストを削減することで、キャッシュフローの改善につながる可能性があります。また、限られた経営資源をより有効な施策に集中させることは、企業成長の加速や同業他社に対する競争力を高める上でも欠かせない視点です。
ただし、注意すべき点もあります。短期的なコストカットだけを追求すると、長期的に見てブランド認知度が低下したり、将来の売上機会を損失したりするリスクが伴います。たとえば、成果の高い広告キャンペーンを誤って停止してしまった場合、後に売上が急落するおそれがあります。
そのため、単に広告費を一律にカットするのではなく、現在の広告活動における投資対効果をデータに基づいて正確に把握することが肝心です。
広告費削減の前のチェックポイント
現状を正しく把握しないまま広告費の最適化を進めると、本来は成果を上げていたはずの有効な広告まで誤って停止してしまうリスクが伴います。効果的な広告戦略を立て、適切な予算配分をするために、必ず事前にKPIやROASを設定・見直すようにしましょう。
KPI（重要業績評価指標）を見直す
広告費削減を効果的に実施するためには、広告運用の目的と成果を測る指標である「KPI」が適切に設定されているかを確認することが大切です。そのうえで、設定中のKPIが現在の事業目標と合致しているか、現状の数値と目標達成度はどうかを確認・評価しましょう。これが削減判断の基準となります。明確な基準がないと感覚的な判断に陥り、効果測定も曖昧になるため注意が必要です。
たとえば、市場での認知獲得を目指す初期段階においては、広告がどれだけ注目され、ウェブサイトへの誘導に繋がっているかを示すCTR（クリック率）や、広告表示の費用対効果を見るCPC（クリック単価）が重要な判断材料です。
一方、事業が成長し具体的な成果を最大化したい段階では、投資した広告費がどれだけ効率的に成果に結びついているかを示すCVR（コンバージョン率）やCPA（顧客獲得単価）にも着目する必要があります。
ROAS（広告の費用対効果）を分析する
ROASは、広告出稿にかかった費用に対する収益の割合を表す指標です。ROASが高いほど費用対効果が高く、効果的な広告施策を打ち出せていると判断できます。
反対にROASが低い場合は、投じた広告コストに見合うだけの売上が得られていないことを示唆します。ROASが低い広告があった場合、その原因を分析し改善策を検討すべきです。具体的には、広告クリエイティブのデザインを刷新したり、ターゲティング精度を高めたりといった対応が考えられます。
このようにROASは費用対効果の高い・低い広告の可視化に役立ちます。分析結果を踏まえ、予算配分を見直すことが可能です。
費用対効果の高い広告チャネルを見極める
KPIの見直しやROASの分析で現状を把握できたら、広告チャネルごとの特性を見極めましょう。「ターゲットに合う広告チャネルを選択できているか」「効果の低い広告チャネルにコストをかけすぎていないか」などを確認し、最も効果的な媒体に重点的に予算を配分することが有効です。
現代のマーケティングではSNS広告や検索広告などの「デジタル広告」の比重が増していますが、テレビCMや新聞広告のような「オフライン広告」も一定の効果を期待できます。具体的には、若年層向け商品はSNS広告、富裕層向けサービスは経済紙広告など、特性とターゲットをマッチングさせることが重要です。
商材やターゲット層によっては、デジタル広告よりオフライン広告のほうが効果的なケースもあるため、ターゲットや目標に合わせた広告チャネルを見極める必要があります。
ムダな広告を最適化するための施策例
広告費のムダを削減するためには、前述したような費用対効果の低い活動を見直すだけでなく、悪質な詐欺への対策も必要です。とくに、アドフラウド（広告詐欺）やブランドイメージ毀損につながるような広告配信は、気づかないうちに大きな損失を生んでいるおそれがあります。
アドフラウド対策・不正トラフィック対策
アドフラウド（Ad Fraud）は、不正な手法によって広告費を搾取する広告詐欺・不正広告のことです。代表的な手法に「広告表示の偽装」「広告クリックの不正」「広告インプレッションの不正な生成」などがあります。
アドフラウドにより不正トラフィックが発生すると広告費がムダになるだけでなく、正確な広告効果の測定も妨げるため、適切な広告運用ができなくなります。このような目に見えにくい被害を回避するためには、アドフラウド検知・防止ツールの導入や、不正トラフィックの少ない信頼性の高い広告プラットフォームの選定といった対策が欠かせません。
これらの不正は巧妙化しており、目視での発見は困難なため、専門的な対策を講じることが効果的です。
ブランドセーフティの確保
ブランドセーフティは、企業が持つブランド価値の低下を防ぐため、不適切なサイトへの広告配信を回避する施策です。
もし自社の広告が不適切な場所に表示されてしまうと、企業やブランドに対する信頼が失墜し、その回復には多大なコストと時間がかかります。結果として、これまで投じてきた広告投資が無駄になるだけでなく、事業全体に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
なかでもWeb広告は、配信先が多岐にわたるため、意図せず不適切なサイトに広告が表示されてしまうリスクが高まります。オフライン広告に比べて掲載先のコントロールが難しいため、ブランドセーフティを意識した対策を講じることが重要です。
アトリビューション分析
ユーザーがコンバージョンに至る道のりでは、複数の広告やチャネルとの接点があります。アトリビューション分析は、これらの各タッチポイントが、最終的な成果獲得に対してどの程度影響を与えたのかを評価するための分析方法です。
アトリビューション分析では以下の評価モデルを用いるのが一般的です。
【アトリビューション分析の評価モデル】
- ラストクリック：最後にクリックされた広告を重視する
- ファーストクリック：最初にクリックされた広告を重視する
- 減衰：コンバージョンに近いチャネル・接点をより重視する
- 線形：コンバージョンに至るまでのすべてのチャネル・接点を均等に評価する
- 接点ベース：最初と最後のチャネル・接点をより重視する
- データドリブン：過去の大量のデータに基づいて各チャネル・接点の貢献度を評価する
どのモデルが適しているかは、業界特性や広告運用の目標、蓄積されたデータ量などによって異なります。アトリビューション分析によって効果的な広告戦略を立てるには、各モデルの特徴を理解することが重要です。自社に合ったモデルを選択し、継続的に分析を行うことは、結果として広告費削減につながります。
日本の広告費・市場の動向
総務省が公開している「令和6年版情報通信白書」によると、2023年（令和5年）の日本の総広告費は約7兆3000億円となり、前年から約3%増加しました。
この成長を特に牽引しているのがインターネット広告費です。インターネット広告費は3兆3,330億円に達し、総広告費に占める割合は約45%と、市場全体の半数近くを占める規模になっています。
2023年は、社会・経済活動の活発化などを背景に広告需要が回復基調で推移したことが、市場全体の増加に寄与したとされています。2022年から連続して過去最高の数値を更新していることから、今後もさらなる広告費の成長が予想されます。
まとめ
広告費削減のためにはKPIやROASの見直し、不正トラフィック対策などが重要です。現状を把握しないままでは効果の高い広告を誤って停止してしまうリスクがあるので注意しましょう。自社の広告が不正なトラフィックにさらされていないか不安な方は、「CHEQ」の無料セキュリティ診断がおすすめです。便利なツールを活用して、計画的に広告費の削減・最適化を進めましょう。
