価格スクレイピングからビジネスを守る：リスクとその防止方法
サニャ・トライチェワ
|サイバー犯罪 | 2024年6月12日
世界で競争の激しい eコマースが拡大する一方で、企業は巧妙で深刻な「価格スクレイピング」という脅威に直面しています。
「価格スクレイピング」とは、ウェブサイトから価格情報を自動的に抜き取る行為を指します。
価格スクレイピングについては意見が分かれています。一見、公開されている価格情報を集めるだけのように思えますが、実際、この行為は悪意があり、倫理的に問題視されるだけでなく、深刻な被害を招きえます。
では、なぜ価格スクレイピングは問題なのか？価格をスクレイピングすることで、競合他社は市場を操作し、正当な企業の足を引っ張ることができるのです。
この記事では、価格スクレイピングとは何か、なぜ有害なのか、どのようにビジネスに悪影響を与えるのか、そして最も重要なこと、それをどのように防ぐのかについて詳しく説明します。
価格スクレイピングとは？
価格スクレイピングとは、ウェブサイトやオンラインプラットフォームから価格情報を抽出する行為のことを指します。このプロセスでは、不正ユーザーがソフトウェアボットを使用して価格情報を盗みます。これらのボットはウェブサイトをクロールし、商品の価格、プロモーション、およびその他の重要なデータを特定して収集します。取得した情報を利用して、競合他社は価格を引き下げたり、価格戦略を調整したりして不当な優位性を得ることができます。
何が行われているのか？
不正ユーザーは、ターゲットとなるウェブサイトから価格情報を抽出するために、スクレイパーボット（英文）を使用します。これらのボットは、価格スクレイピングのプロセスを自動化し、特定の製品の価格情報を収集します。このような攻撃は特定のウェブサイトや製品だけでなく、すべての競合他社の情報を収集しようとします。
例えば、冬のブーツを専門に扱う新しいECサイトを作ろうと思った場合、可能な限り多くの競合他社の価格戦略を理解したいと考えるでしょう。この情報を手に入れられれば、同じブーツの価格を比較したり、価格変動を観察することで、優位になる価格設定を行うことができます。
これらの悪意のあるボット（英文）は、現在の製品の価格を収集するだけでなく、過去の価格変更も取得しようとしている点に注意が必要です。過去のデータも含めて取得することにより、競合他社の価格戦略、特別オファー、リピート客向けの割引戦略、販売頻度、紹介制度、アフィリエイトコードなどの洞察が得られます。
価格スクレイピングのプロセスは通常、次の 2 ステップで構成されます。
- ターゲットを攻撃する：
- スクレイパーボットがターゲットのウェブサイトを攻撃します。
- これには、競合他社のウェブサイト、オンラインマーケットプレイス、価格比較サイトなどが含まれる場合があります。
- データをスクレイピングする：
- リアルタイムでデータを抽出するか、過去の価格情報にアクセスします。
- スクレイピングで取得した情報を保存するデータベースを作成し、取得した情報を更新し続けます。
違法な価格監視のリスクと課題
最近、特にコロナ後においては、新しいオンラインビジネスが日々生まれています。そのため、オンライン市場での競争は激しくなっており、価格スクレイピングのリスクが高まっています。
新規参入する企業は、市場に参入する際の準備として、価格スクレイピングを好んで使用しています。しかし、ある企業の成功は、すでに確立されたプレーヤーにとっては脅威となります。
すでに市場で認知されている企業のウェブサイトは価格スクレイピングボットにとって、格好のターゲットとなります。これらのボットは密かにウェブサイトに侵入し、くまなく回り製品の価格情報を収集します。そして、同じことを競合他社にも行っています。この情報を武器に、新規参入する企業は自社製品の価格を下げたり、割引を大きくしたり、無料特典を行うなど、あらゆる手段で顧客を引き付けるための価格戦略を練っています。
その結果はどうなるでしょうか？ロイヤルカスタマーだったはずの顧客がより良い取引を求めて他のサイトに移ってしまうため、突然、カート放棄、収益の低下、顧客の喪失に直面することになります。さらに、大量のボットトラフィック（英文）によってウェブサイトの速度が低下し、ユーザーエクスペリエンスが悪化して、さらに顧客を遠ざけてしいます。
しかし、価格スクレイピングのリスクはこれだけではありません。長期的な影響を引き起こす可能性もあります。価格スクレイピングは通常のビジネスの運営を妨げるのはもちろんですが、価格スクレイピングへの対策や解決にコストやリソースを浪費させられてしまうおそれもあります。
悪夢はこれだけでは終わりません。価格スクレイピングは不正アクセスへの扉を開き、データ漏洩につながる可能性があり、機密情報を危険にさらすことになります。ビジネスが危険にさらされているだけでなく、ロイヤルカスタマーのプライバシーとセキュリティも危険にさらされているのです。
この記事（英文）では、ウェブサイト上のボットを減らすためのヒントやコツについて学ぶことができます。
狙われやすい業界
ECサイトにとって、価格スクレイピングは大きな脅威となっています。ECサイトが成功すればするほど、競合他社による価格スクレイピング攻撃のターゲットになる可能性が高くなります。
さまざまな業界が価格スクレイピングのターゲットとなっており、その背景にはオンラインビジネスの競争の激しさと、競合他社を監視する重要性があります。狙われやすい業界には以下のようなものがあります。
E コマース：競合他社間で価格スクレイピングが最も一般的に使用されている業界です。ECサイトショップは、価格スクレイピングを使用して競合他社の価格を監視し、それに応じて自社の価格を調整します。これにより、価格競争が起こり、短期的には消費者に利益をもたらす可能性がありますが、企業にとっては利益率を圧迫する要因にもなります。その結果、業によっては経営を圧迫するほどの損失につながるおそれもあります。
旅行とホスピタリティ：航空会社、ホテル、旅行予約サイトは、需要、季節性、競合他社の提供内容などの情報に基づいて、常に価格を調整しています。旅行とホスピタリティの場合、価格スクレイピングは、異なる予約サイトの価格を比較することで、公正な競争を可能にするという点でより多く使用されています。この習慣と非倫理的な価格スクレイピングの違いについては、次の章でより詳しく説明します。
不動産：不動産情報サイトは、競合他社が物件価格、賃料、その他の関連データを収集しようとする価格スクレイピングの対象となる可能性があります。
家電・IT業界：電子機器やガジェットの価格は非常に競争が激しく、企業は競合他社から価格情報をスクレイピングして、自社の価格を低く設定しています。
自動車業界：競合他社の車両、部品、整備サービスの価格を監視するために価格スクレイピングが行われています。
小売業と消費財：Eコマースだけではなく、従来の小売業者も価格比較を行い、市場で競争力を維持するために価格スクレイピングを行う可能性があります。取得したデータを使用して競合他社の価格設定を把握し、それに対抗した価格戦略を打ち出しています。
ヘルスケア・製薬業界：非常に競争の激しい分野で、様々な製品、メーカー、ECサイトが存在します。そのため、医薬品、医療用品、ヘルスケアサービスの価格情報は、価格スクレイピングの格好のターゲットとなっています。
価格スクレイピングの二つの側面：健全な競争か、不公平な優位性か
価格スクレイピングについて議論されている疑問の1つに、市場調査目的で使用する場合にも有害とみなされるのかというものがあります。
価格スクレイピングは有害で倫理的・物流的な問題を引き起こすこともありますが、アグリゲーターでは許容される場合もあります。
その違いは、価格スクレイピングの目的とやり方にあります。モニタリングサイトや市場調査は、倫理的なやり方で価格情報を集めます。
ウェブスクレイピングは、ウェブサイトから情報を抽出する技術です。検索エンジンや価格比較サイトなど、多くの場面で活用されていますが、悪用されるケースも存在します。
検索エンジンは、robots.txtと呼ばれるファイルに従って、ウェブサイト上のどのURLにアクセスできるかを判断します。検索エンジンなどのクローラーにどの URL にアクセスできるかを伝える robots.txt ファイルを守ります。また、大量のリクエストでウェブサイトに負荷をかけすぎないよう設計されています。これらはすべて公正な競争環境の維持に大切な役割を果たしています。
Expedia や Skyscanner などの価格モニタリングサイトがその例です。これらのサイトでは、ユーザーが価格を比べることができ、透明性が高まります。結果的に市場全体に利益をもたらします。
一方、悪意のある目的で利用されるスクレイピング、例えば極端な価格設定や市場操作のためのスクレピングは、競争を歪め、すべての関係者に損害を与えます。
価格スクレイピングのリスクを軽減し、防止する方法
スクレイピングボットを特定してブロックする（英文）ことは、いくつもの方法を組み合わせる必要があり、簡単ではありません。法的な対策と技術的な解決策のバランスを取ることで、悪意のある競合他社から守ることができます。
- 価格スクレイピングに対する法的措置
法的措置を講じることで、潜在的な価格スクレイピングの悪影響を軽減することができます。例えば、利用規約やプライバシーポリシーに、許可されていない価格スクレイピングを禁止すると明確に書くことで、価格スクレイピングの悪影響を軽減するための法的措置を講じることができます。これにより、違反者に対して法的な根拠を持って行動できるようになります。
ただし、この方法にも限界があります。残念ながら、違反者の中には身元を隠す方法を知っている人もいるため、脅威にならない可能性があります。
- CHEQ を用いたボット対策
価格スクレイピングに対抗するには、より強力な対策が必要です。まず、スクレイパーボットがウェブサイトにアクセスできないようにする必要があります。
しかし、スクレイパーボットは高度になっており、人間の操作を模倣する能力が向上しているため、ボットによるアクセスをブロックすることはさらに難しくなっています。このような脅威に立ち向かうには、強力なボット管理ソリューションを導入することが欠かせません。
CHEQ は、従来のボット対策よりも優れた、ボットを検知してブロックするソフトウェアです。ユーザーの行動を分析し、スクレイピングボットなどの悪意のあるボットをリアルタイムで正確に特定し、大切なデータへのアクセスをブロックします。
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よくある質問
価格スクレイピングは消費者にとってどのような影響がありますか？
価格スクレイピングは、消費者に様々な影響を与える可能性があります。影響は、スクレイピングされたデータの使用方法など、様々な要因によって左右されます。
消費者にとってのプラスの影響としては、価格比較サイトの利用や価格の透明性の向上などが挙げられます。一方で、マイナスの影響としては、需要に応じた価格設定戦略の実施や小売業者のウェブサイトへのアクセス増加により、需要が高まる時間帯の価格上昇や商品の在庫切れが生じる可能性があります。
価格スクレイピングは合法ですか？
価格スクレイピングそのものは、多くの場合、違法ではありません。しかし、スクレイピングのやり方や、集めたデータの使い方によっては、法的な問題が生じる可能性があります。
例えば、ウェブサイトの利用規約やrobots.txtに反する場合、サーバーに大きな負担をかける場合、秘密の情報や守られているデータ（例：企業の秘密情報）を取り出す場合などです。このような場合、スクレイパーは契約違反、不正競争、さらにはデータ窃盗を行なったとして法的措置を受ける可能性があります。
価格スクレイピングが公正な競争に与える影響
価格スクレイピングは、競争環境に様々な影響を与えます。ここでは、その主な影響について詳しく説明します。
まず、価格スクレイピングを使うと、競合他社の価格情報をすぐに手に入れることができるため、一部の企業に不公平な優位性をもたらします。この情報に基づいて、迅速かつ戦略的に価格を調整することが可能になり、価格競争において有利な立場に立つことができます。
また、スクレイピングは、価格を人工的に操作するために使われることもあります。例えば、競合他社の価格を、偽の需要で高くすることがあります。
さらに、価格スクレイピングのおかげで、大企業は安い価格で販売しても、利益を維持できる可能性があります。一方、小さな企業は、競合他社が設定した安い価格に合わせようとしても、利益を維持できません。
筆者
サニャ・トライチェワ
コンテンツ・マーケターとしての経験を積んだサニャは、オーディエンスを鼓舞し、教育するストーリーテリングの力に深い信念を持っています。彼女は常に新しいアイデアを常に探し求め、次なる冒険を計画することを楽しんでいます。それ以外に、偽のトラフィックや広告詐欺などのトピックの習得に専念しています。
