デジタルマーケティングにおける顧客獲得を妨げる8種類のボット
ジョナサン・マルシアーノ
|サイバー犯罪 | 2021年2月08日
デジタルマーケティングにおいて、GoogleやYahoo等のリスティング広告やFacebook、Instagram等のSNS広告の利用は欠かせません。しかし最新の調査により、これらのWeb広告経由で流入するトラフィックの中にも、マーケティング施策に悪影響を与えるボットが存在していることが明らかになりました。広告予算を無駄遣いし、ビジネスのKPIを歪めてしまうボットにはどのようなものがあるのでしょうか?
当記事ではWeb広告に月5000万円以上の支出をしている世界各国の大手小売業様30社に協力いただき、Webキャンペーンの分析(※)を行う中で明らかになった2020年時点の最新のフラウド手法について、要約します。
※リスティング広告やSNS広告のキャンペーンにおいて、実際のユーザー及びボットが、広告からサイトやランディングページにアクセスした際のクリックを1週間にわたって追跡。
協力企業:スキンケアブランド、オンラインマーケットプレイス企業、ファッションEC企業、旅行会社、オンライン大学、金融企業など30社
レポート全文(英語版、PDFファイル):Bot Behavior on eCommerce Sites
eコマースサイトで発見された8種類のボット
1. カートボット
リスティング広告やSNS広告経由で流入したボットの50体に1体が、サイトのショッピングカートをクリックしてるカートボットです。このようなボットは、購入関連のデータを歪ませるだけでなく、物流や返金等の工程へも問題を引き起こします。ボットによる注文フォームの入力や見せかけの購入は、オンラインセールス、リード数、メール登録、フォーム入力等のコンバージョン率に影響を与えています。
ある金融会社の場合、ローン承認の取り消し対応まで迫られる事態が発生していました。これは、ローン会社が特定の基準に基づいてローンを承認した後、申請内容が不正確であることが判明したために、ローンを取り消したというものです。
2. リターナー
上記の調査では、数千もの異なるボットが数百回に渡り同じサイトを訪問していることも確認されました。これらのリターナーボットはマーケティング予算を無駄遣いするだけではなく、リターゲティングキャンペーンへも悪影響を与えており、あるサイトにおいては、2117体のボットが1週間で34,031回も戻ってきていました。
3. スクレーパー
スクレーパーとは、Webページやアプリから大量のデータを自動収集するボットのことです。スクレーパは広告詐欺によく使われており、あるサイトでは、スクレーパーにより1日あたり5,000回ものクリックが行われていました。調査の中では、ボットがレシピサイトの良質なコンテンツを盗んでサイトを作り、オンライン広告により不当な収益を得ているケースも見つかりました。
4. 遠距離ボット
ボットの5体に1体は、VPNやデーターセンターにより、米国、英国、日本の買い物客のふりをしている遠距離ボットです。このようなケースでは、パキスタンやベトナム等、ターゲットにされたEコマースサイトが配送を行っていない国から攻撃が行われていました。
例えば、ある世界的なスキンケアブランドは、月に数千万円を投じているリスティング広告の多くがこうした所在不明のクリックに消費されていました。また、1ヶ月あたり2.5億円をWeb広告に投資している世界最大級のDIYマーケットプレイスにおいては、VPNにより所在地を隠した中国やマレーシア等からの不正クリックが週に14,000件以上確認されました。
5. ハートブレイカー
リターゲティングは、関連広告をWebサイトに表示することにより、サイトに戻らなかったユーザーを獲得することを目的としている重要なマーケティング戦略で、 マーケターの5人に1人は、リターゲティング専用の予算を持っていると言われます。 しかし、リターゲティング予算やそれに関わるマーケターの労力がボットに対して使われてしまうと悲惨です。 例えば、あるEコマースサイトにおいては、35万円のリターゲティング予算がボットにより無駄遣いされていました。
6. チャージバッカー
チャージバッカーとは、Webサイトの取引完了ページを利用して、チャージバック詐欺を行うボットのことです。これらのボットはWebサイト上での取引完了後、返金を求めます。ある大企業では、月に7千万円以上をWeb広告費として投資していましたが、サイトのトラフィックには何千件ものボットによる取引完了ページへの不正アクセスがあり、チャージバック詐欺が行われていたことが発覚しました。
7. 批評家ボット
批評家ボットは、架空のレビューを生成し、eコマース企業の評判を落とします。これには、自社の評判を上げるための偽投稿や偽アプリレビューなども含まれます。ある旅行サイトの場合、架空のレビューを生成するボットによる2,500件の不正クリックが見つかりました。
8. 居座りボット
居座りボットはサイトに訪問・滞在することにより、広告費を浪費し、ビジネスの重要な判断材料である分析データを歪めます。リスティング広告を不正クリックするボットは、70%の確率でブランド関連の検索キーワード(企業名、事業名、ブランド名)をクリックしており、調査対象となった殆どの企業では、1クリックあたり平均100円がボットに無駄遣いされていました。
あるファッション系eコマースサイトの例では、「メンズジャケット」の56%、「シューズクーポン」の52%、「アシックス 新作」の48%が、不正クリックとなっていました。これらのボットによるサイトへの不正訪問は広告費を浪費し、分析データを歪めます。サイト到達後、92%のボットは平均12秒間サイトに居座った後、離脱していました。
これらのボットはそれぞれに違った特徴がありますが、同じ結果をもたらします。広告やビジネスにおけるKPIを歪め、データ分析やブランドの価値、新規顧客獲得に悪影響を与えてしまうのです。
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原文:These 8 Bots are Killing Your Customer Acquisition
1米ドル=100円にて換算