ボット対策の重要性と活用法
ケリー・コッピンガー
|Web サイト運用・セキュリティ対策 | 2024年9月02日
近年、ウェブサイトへの攻撃はますます巧妙化しており、その多くは自動化されたプログラムである「ボット」によって行われています。ボットは、企業のウェブサイトに不正アクセスし、個人情報や機密情報を盗み出したり、サービスを妨害したりするなど、さまざまな悪質な行為を行います。このような脅威からウェブサイトを守るために、ボット対策は不可欠となっています。
。この状況により、先進的な組織でさえも、クリックファームによる操作、アカウント乗っ取り(英文)、ブルートフォース攻撃などの被害を受けるリスクが高まっています。これらのオンライン上の脅威は多様で、ビジネスに様々な悪影響を及ぼします。具体的には、データの信頼性低下、収益機会の損失、指標の歪みなどが起こる可能性があります。
幸いなことに、サイバーセキュリティの専門家たちはこれらの問題に対して対策を進めています。特に注目を集めているのが「ボット対策」技術です。本記事では、このボット対策について詳しく解説します。
インバウンドトラフィックの 11.3 %が偽造または不正であることが判明しています。詳細については「不正トラフィック 業種別の傾向と予測 2023」をご参照ください。
ボット対策とは
ボット対策とは、ソフトウェアを活用してウェブサイトを守る方法の一つです。このソフトウェアは、ウェブサイトに接続しようとする悪意のあるボットトラフィック(英文)を見つけ出し、ブロックする役割を担います。ボットトラフィックとは、自動化されたプログラムによって生成される通信のことを指します。
ボット対策ソフトウェアの主な機能は、ボットを検知し、それらが本当に脅威となるかどうかを見極めることです。さらに、将来的な被害を未然に防ぐため、攻撃を受ける可能性が高い箇所からボットを締め出すような対策を実施します。
このような対策は、ウェブサイトのセキュリティを強化し、正常なユーザーの利用体験を保護するために重要です。効果的なボット対策により、サイトのパフォーマンス向上やデータの保護、不正アクセスの防止などが期待できます。
ボット対策が解決する問題
ボット対策は、ウェブサイトやオンラインプラットフォームを訪れる悪意のあるボットや不正ユーザーが引き起こす多様な問題に対処します。具体的には、下記のようなものが挙げられます。
- ユーザー情報の不正取得の防止
- クレジットカード詐欺の阻止
- サーバーへの過剰な負荷の軽減
- 分析データの正確性を向上
しかし、これらは対処可能な問題の一部にすぎません。
一方で、ボット対策には制限もあります。組織が直接管理していない外部のチャネルで発生する脅威には対応できないという限界があります。例えば、広告プラットフォームでの不正行為、アフィリエイトパートナーシップにおける問題、その他の外部ベンダーやパートナーに関連する課題は、通常のボット対策の範囲外となります。これらの問題に対処するには、ボット対策とは別の、より広範なサイバーセキュリティ対策が必要になる可能性があります。
ボット対策の恩恵を受けられる企業
オンラインで事業を展開しているほとんどの企業は、ボット対策の恩恵(英文)を受けることができます。これまで、ボット対策は最もリスクが高いと見なされるウェブサイトにのみ必要なソリューションだと考えられていました。例えば、金融情報を扱う銀行や、大規模な個人情報データベースを保有する政府機関などが該当します。
しかし、インターネット上の情報の多くが信頼性に欠けることが明らかになるにつれ、この認識は変化しています。そのため、高度に機密性の高い情報を保有していない組織であっても、ボットの影響を受ける可能性があります。つまり、ほぼすべての組織がボット対策の対象となり得るのです。
ボット対策は、オンラインでの事業運営の安全性と信頼性を高めるための重要な手段となっています。企業規模や業種に関わらず、デジタル空間での存在感を持つ組織にとって、ボット対策は重要な考慮事項となっています。
ボット対策の EC サイトへの影響
ボット対策は、EC サイトに多くの利点をもたらします。主に、悪意ある活動(英文)からオンラインストアを守る役割を果たします。自動化されたボットによる価格操作、在庫の不正な消費、不正取引などを防止し、公平な競争環境を維持します。また、この保護機能により分析データの正確性が向上するため、企業は信頼できるデータに基づいて適切な意思決定を行えるようになります。
ボットの抑制は顧客体験の改善にもつながります。ボットによる過剰なトラフィックがウェブサイトの速度低下やシステム停止を引き起こすリスクが減少するためです。これにより、EC サイトはより安定した運営が可能になります。
結論として、ボット対策はEC サイトの健全性を保ち、顧客からの信頼を築き、そしてオンラインストア全体の安定性と性能を確保するために不可欠な要素となっています。
よく使われるボット対策の手法
よく使われるボット対策の手法には以下のようなものがあります:
- CAPTCHA の実装:CAPTCHA は、人間とコンピューターを区別するために、文字や画像を読み取らせる認証システム
- 行動分析の利用:通常のユーザーとは異なる異常なパターンを検出し、異常なパターンを検出するために活用します
- IP ブロッキングの採用:特定のIPアドレスからのアクセスを制限することで、不審なトラフィックを制限するために導入します
- デバイスフィンガープリンティングの導入:デバイス固有の特性を組み合わせることで、個々のデバイスを識別する技術で、識別精度を高めるために使用します
これらの手法に加えて、総合的なボット対策アプローチには他の要素も含まれます。セキュリティプロトコルを定期的に最新化すること、新たな脅威に対応するための機械学習アルゴリズムを使用すること(自動化されたソフトウェアソリューションなど)、そして脅威に関する情報を共有する協力体制を構築することなどが挙げられます。これらの取り組みにより、より効果的なボット対策が実現できます。
ボット対策ベンダーの選び方
ボット対策ベンダーを選ぶ際には、下記三つの重要な要素を考慮する必要があります。
- ソリューションが提供する機能
- ベンダーのチームが持つサイバーセキュリティの専門知識のレベル
- ソリューションが日々の業務にどれほどスムーズに適合するか
適切なベンダーの特徴としては、以下のようなものがあります。まず、各ユーザーの正当性を確認するために出来るだけ多くののサイバーセキュリティチェックを使用し、誤った判定を避ける能力を持つシステムを提供していること。次に、サイバーセキュリティ業界で豊富な経験を有していること。例えば、どれだけの世界的な大手企業、セキュリティベンダーがその技術を利用しているのか。そして、自社のチームが理解しやすい言葉や指標を使用していることです。ボットは1つでも網目を潜り抜けてしまうと組織にとって大きなリスクと損失をもたらします。これらの特徴を備えた技術力が高いベンダーは、適切な選択肢となる可能性が高いでしょう。
ボット対策以外にできること
ボットや偽ユーザーの影響は、ウェブサイトだけでなく、多くのオンライン領域に広がっています。企業に影響を与える可能性のある領域には、広告プラットフォーム、ソーシャルメディア、コンテンツ配信ネットワーク、データ分析ツールなどがあります。これらの領域も不正なアクセスや活動による脅威にさらされる可能性があります。
このような幅広い脅威に対応するため、多くのサイバーセキュリティ企業は総合的な保護策を提供しています。これらの対策は、ウェブサイト以外の領域におけるボットや偽ユーザーのリスクに対処するために開発されています。これにより、企業は自社のオンライン活動全体を包括的に守ることができます。