不正トラフィック(IVT)とは?
Oli Lynch
|サイバー犯罪 | 2024年9月12日
検索マーケティングの分野では、「不正トラフィック(IVT)」という言葉をよく耳にします。多くのマーケターは、これを避けられないものとして受け止めているかもしれません。実際、GoogleやBingの広告キャンペーンで不正クリック(英文)に対する返金を経験したことがある方も少なくないでしょう。
確かに、これらの企業は不正トラフィックに対して自動的に返金を行っています。ただし、ここで疑問が生じます。そもそも不正トラフィックとは具体的に何を指すのでしょうか。そして、私たちマーケターにできる対策はあるのでしょうか。これらの点について、詳しく見ていく必要があります。
不正トラフィック(IVT)の定義
不正トラフィックとは、有料リンクに対する非正規のクリック活動全般を指す総称です。これには意図的な不正クリックだけでなく、純粋な事故や不適切な広告配置、ポップアップによって引き起こされるものも含まれます。
Googleは不正トラフィックを次のように定義しています:
不正トラフィックとは、真の関心を持つ実際のユーザーからのものではない活動すべてを指します。これには、侵襲的な広告実装による偶発的なクリック、競合他社による不正クリック、広告ボットネットなどが含まれます。
この定義は正確ですが、「など」の部分にはさらに多くの要素が含まれています。また、不正トラフィックにはさまざまなレベルがあることを理解しておく必要があります。例えば、特定の種類のボットトラフィック(英文)やマルウェアによるクリックは、非常に高度な形態の不正トラフィックを生成します。これらは多くの場合、VPNの背後に隠れたり、人間の行動を模倣したりします。
IPアドレスに基づいて悪質なトラフィックをブロックすることで、一部のカジュアルなクリック詐欺を防ぐことはできます。しかし、誰が、あるいは何があなたの広告をクリックしているのかを深く理解することで、デジタル広告における不正トラフィックの見方が大きく変わる可能性があります。
不正トラフィックの原因
不正トラフィックの定義をより詳しく調べると、いくつかの共通した要因が見えてきます:
- クリックファーム(英文)やPTC(Paid-to-Click)サイト(英文)からの有料クリック
- アドスタッキングなど、不正な配置によるクリック
- アプリやブラウザのマルウェア(英文)によるスパムクリック
- 同じソースからの繰り返しのクリック
- ボットクリック(英文)などの組織的な不正トラフィック
クリックファームとPTCサイト
クリックファームは、ウェブサイトのトラフィックを販売する組織です。主な目的は以下の通りです。
- SNSのエンゲージメント増加
- ウェブサイトのトラフィック統計向上
- 競合他社の有料広告キャンペーンへのクリック
近年、このクリックファームモデルはPTC(Paid-to-Click)サイトへと進化しています。PTCサイトとは、ユーザーに広告のクリックや視聴の対価として遠隔で収入を提供するアプリやウェブサイトのことです。
このような状況では、わずかな報酬を得るためや実際の商品やサービスへの興味はない人々に広告がクリックされることが多くなり、コンバージョン率がとても低くなってしまいます。その結果、広告費用が効果的に使われていない状態に陥いるおそれがあります。
不正な広告配置
不正トラフィックが有料キャンペーンに誘導される方法の一つに、広告を隠したり重ねたりする手法があります。例えば、広告の重ね合わせは、実際には一つの広告しか表示されていないにもかかわらず、不正なパブリッシャーが複数の報酬を得るために使用されます。
さらに悪質な方法として、広告が見えないiframeの中に隠されることがあります。この場合、広告は技術的には表示されていますが、実際には人間の目に触れることなく「閲覧」されてしまいます。
これらの手法により、広告主は実際の効果がないにもかかわらず、広告費用を支払うことになります。そのため、このような不正な広告配置は、デジタル広告業界における重大な問題となっています。
不正クリック
アプリやブラウザ拡張機能などのソフトウェアには、マルウェアが含まれていることがあります。マルウェアとは、不正な活動を行うように設計されたソフトウェアのことです。
このようなアプリは実際の人間のクリック行動を利用して、不正クリックを行います。具体的には、ユーザーが気づかないうちに隠れた広告に誘導したり、後のダウンロードやオンライン購入の際にクレジットを不正に取得したりします。
マルウェアによるクリックは、多くの場合、本物の人間の活動を巧みに利用した洗練された不正トラフィックの発生源です。そのため、一般的な対策では検出が難しく、広告主にとって深刻な問題となっています。
大量クリック
同一ソースから大量のクリックが発生する場合、それは多くの場合、組織的なクリック詐欺キャンペーンの存在を示唆します。この現象には複数の要因が考えられます。
まず、クリックファームによる行為の可能性があります。次に、競合他社があなたの広告を意図的にクリックしている場合も考えられます。さらに、先ほど説明したマルウェアによるクリックの可能性もあります。
このような同一ソースからの大量クリックは、Google Analyticsにおいて不正トラフィックを示す重要な警告サインです。そのため、広告主は広告クリックのパターンに特に注意を払う必要があります。異常なクリックパターンを早期に発見し、適切な対策を講じることが重要です。
アドフラウド
アドフラウド(英文)は、現在のサイバー犯罪の中でも特に注目されている形態の一つです。これは、実際の閲覧数やクリック数が大幅に水増しされた広告、あるいは全く閲覧されていない広告に対して報酬が請求される不正行為を指します。
不正なウェブサイト所有者は、次のような方法でアドフラウドを実行します。まず、自身のサイトに広告をホストします。そして、その広告のビュー数やクリック数を増やすために、トラフィックを購入します。
このように購入されるトラフィックは、通常、ボットによるものです。ボットトラフィックは、実際の人間ではなくプログラムによって生成されるため、広告主にとっては全くコンバージョンにつながらない無駄な支出となります。
このようなアドフラウドは、デジタル広告業界における深刻な問題となっており、広告主は常に警戒が必要です。
偶発的なクリック
不正トラフィックという用語は、クリック詐欺や広告詐欺に関連する悪意のある行為を指すことが多いですが、意図せずに発生する偶発的なクリックも含まれます。
例えば、ニュースフィードをスクロールしている際に、誤って広告リンクをクリックしてしまうことがあります。そして、ページの読み込みが始まった瞬間に気づいて閉じる、というような経験をした方も多いでしょう。
このような偶発的なクリックも、技術的には不正クリックの一種とみなされます。なぜなら、これらのクリックは広告主が求める本来の目的(製品やサービスへの関心)を反映していないからです。
偶発的なクリックは悪意によるものではありませんが、広告効果の測定を歪める可能性があるため、広告主やプラットフォーム運営者にとって重要な考慮事項となっています。
不正クリックのコスト
定義上、これまで説明したソースからのクリックはすべて不正トラフィックとみなされます。つまり、広告プラットフォームの規定によれば、広告主はこれらに対して料金を支払う必要はありません。
しかし、実際にはこの問題はより複雑です。Google広告やFacebook広告などのクリック課金型(PPC)広告を利用している場合、1クリックあたりのコストは場合によってはかなり高額になる可能性があります。
クリックあたり数円を支払っている広告主の場合、不正トラフィックをマーケティング予算の付随的な損失として見過ごしてしまうかもしれません。一方、より高額なキーワードに入札している広告主は、実際にどの程度の不正トラフィックが存在し、どれほどのコストがかかっているのかにより大きな関心を持つでしょう。
ある大手ECサイトでは、不正トラフィックによる損失が年間数億円に達したという事例もあります。このようなケースでは、企業の収益に大きな影響を与える可能性があるため、不正トラフィック対策は喫緊の課題となっています。
さらに、不正クリックの問題は単純な金銭的損失にとどまりません。不正クリックは本物の見込み客への広告露出機会を減らしてしまう可能性があります。特に、中小企業やデジタルマーケティング代理店など、限られた予算で運用している場合、非正規の行為者にクリックを奪われることでKPIに悪影響を与え、投資収益率を歪めてしまう恐れがあります。
このように、不正クリックの問題は広告主にとって重要な課題であり、適切な対策が必要となります。
不正クリックはどれくらいあるのか
データによると、オンライントラフィックの半数以上が、ウェブスクレイパーやその他のボットによる自動化されたものであることが明らかになっています。
しかし、有料検索リンクに関しては、不正トラフィックのすべてが自動化されているわけではありません。先述の通り、多くの不正トラフィックは、悪意のある競合他社、ブランド批判者、不適切な広告配置のウェブサイトなど、様々な要因から発生しています。
CHEQの独自データによると、2020年時点で不正クリックの平均発生率は約14%となっています。ただし、これはあくまで平均値であり、業界によっては大きな差があります。例えば、一部の業界ではPPC広告の不正クリック率が70%を超えるケースもあります。
特に高い不正クリック率が見られる業界として、写真家、鍵屋、配管工などが挙げられます。また、法律、金融、Eコマースなどの業界でも、不正トラフィックの割合が30%前後に達しています。
さらに注目すべき点として、有料検索広告キャンペーンの約90%が、何らかの形で不正クリックや不正トラフィックの影響を受けているという事実があります。
2020年のクリック詐欺に関する当社の調査結果はこちら(英文)でご覧いただけます。
不正トラフィックを見分ける方法
不正トラフィックの一般的な兆候には以下のようなものがあります:
- サイトの高いバウンス率
- サイトでの滞在時間が短い(通常は単一ページの閲覧)
- 予期せぬトラフィックの急増
- 低いコンバージョン率(特にトラフィックが急増した際)
- 同一IPアドレスからの複数回のクリック
- 通常とは異なる時間帯にトラフィックが増加するなど、奇妙なトラフィックのパターン
- 奇妙なトラフィックパターンの一貫性
ただし、これらの兆候が単独で現れた場合、必ずしも不正トラフィックを意味するわけではありません。例えば、高いバウンス率は広告の最適化不足を示している可能性があり、トラフィックの急増はキャンペーンのタイミングや宣伝商品の特性に関連している可能性もあります。
しかし、これらの兆候が複数組み合わさって現れる場合は注意が必要です。例えば、一貫したトラフィックの急増と高いバウンス率が見られ、にもかかわらずコンバージョンの増加がないという状況であれば、不正トラフィックが原因である可能性が高いと考えられます。
このような複合的な兆候を見逃さず、適切に分析することが、不正トラフィックの特定と対策に重要です。
不正トラフィック(IVT)への対策
不正トラフィックはデジタルマーケティングにおいて避けられない現実ですが、ただ受け入れるだけではなく、積極的に対策を講じることが可能です。
まず、不正トラフィックの影響を受けたと感じた場合、広告プラットフォームに連絡し、懸念を表明し、返金を要求することができます。また、検索キャンペーンの最適化も重要です。具体的には、除外キーワードの設定、地理的除外、配信時間の調整などが有効な対策となります。
不正クリックと不正トラフィックを効果的に防ぐ最良の方法として、CHEQの利用が挙げられます。CHEQはマーケティング戦略の一環として、不正トラフィックをブロックし、偽のクリックによる損失を防ぐことができます。CHEQを1か月使用するコストは、一部の高額キーワードの有料クリック1回分程度であり、費用対効果が高いと言えます。
CHEQの主な特徴は以下の通りです:
- IPアドレスではなく、独自のデバイスフィンガープリントIDに基づいてトラフィックをブロックします。これにより、簡単に隠蔽できるIPアドレスよりも効果的な対策が可能です。
- 既知の不正デバイスのブラックリストを常に更新しており、2016年の創業以来そのプロセスを継続しています。
- 機械学習アルゴリズムを使用し、クリック詐欺や広告詐欺のトレンド(および一般的な不正トラフィック)を監視しています。これにより、他の誰もが気付く前に最も問題のあるボットや詐欺ソースをブロックすることができます。
不正トラフィック(IVT)から広告キャンペーンを守るために、Google広告、YouTube、またはBing広告の検索やディスプレイキャンペーンを実行している場合は、CHEQで広告トラフィックの無料診断を行うことをお勧めします。これにより、現状を把握し、適切な対策を講じることができます。